福岡高等裁判所 昭和26年(う)3616号 判決
もともと政府の免許を受けないで酒類を製造する目的を以てまず醪をつくることは酒類製造の過程における一段階にすぎないものであるから本件の場合、若し被告人が密造した醪五斗七升全部を蒸餾して焼酎を製造し終つた後に発覚したものならばその醪の製造は当然に酒類製造の事実に吸収されて免許を受けないでした酒類製造の一罪が成立するのにすぎないのにたまたまその密造の過程において事発覚し製造された酒類の外、未だ蒸餾し終らない醪の一部残があつたからとて酒類製造と、残りの醪につき醪製造の二罪の成立を認めることの不合理である点並びに、洒税法第六十条第二項において酒類密造の未遂罪を認めている点などから考えると、免許を受けないで酒類を製造する目的を以て原料を仕込んで、まず醪を製造し、引続きその醪の一部を蒸餾して酒類を製造したときはその免許を受けないでした焼酎製造の所為と残つた醪製造の事実とはこれを包括して一罪を構成するにすぎないものと解するのが相当である。
してみれば被告人の本件免許を受けないでした焼酎製造の所為と残つた醪製造の所為とは、右説明したところによつてたんに包括一罪を構成するにすぎないのにかかわらず原判決が前記のとおり醪の密造と焼酎密造の二罪成立するものとして各事実毎に洒税法第六十条第一項を適用処断したのは、法令の適用を誤つたものであり、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決は刑事訴訟法第三百九十七条第三百八十条に則り破棄を免かれない。